年の瀬を迎え、この1年を振り返りながら、改めて強く感じることがあります。それは、中小製造業を取り巻く経営環境が、想像以上のスピードで変化しているという事実です。
本年、私が経営支援や企業研修を通じて関わらせていただいた多くの中小製造業の経営者の皆さま、現場の管理職・技術者の皆さまには、心より感謝申し上げます。
同時に、この1年は、私自身にとっても多くの気付きと学びを得た、非常に濃い時間となりました。技術者として現場を見てきた経験と、経営からの視点を行き来してきた立場だからこそ、経営者の皆さまが抱える「判断の難しさ」や「現場との距離感」に、強く共感する場面が多々あります。
分かっているが、踏み出せない――多くの現場で見た共通課題
この1年、多くの企業の現場に触れる中で、繰り返し目にした光景があります。それは、本来やるべきことは分かっているが、実行に移せていないという現実です。品質不良の再発、コスト構造の不透明さ、改善活動の停滞、人材育成の遅れ。経営者も管理職も、「根本原因を掴み、対策を打つことが重要」であることは理解しています。しかし、日々の業務に追われる中で、気付けば対症療法に終始し、本質的な手当てが後回しになってしまう。
これは決して能力不足ではありません。「考える時間」と「整理する視点」を確保できていないことが、最大の要因だと感じています。
生成AIは、まだ「使いこなす前」の段階にある
生成AIが広く知られるようになったのは、2022年末以降です。つまり、誰もが長年の活用経験を持っているわけではありません。にもかかわらず、現場では次のような声を多く耳にします。
「何ができるのか、よく分からない」
「うちの規模では使いこなせないのではないか」
「情報漏洩が不安で、踏み出せない」
結果として、生成AIの活用に前向きになれない中小企業経営者が多いという現実を、この1年、私は何度も目の当たりにしてきました。
しかし、ここで一つ、冷静に考えていただきたいのです。生成AIは、すでに完成された答えを与える「魔法の箱」ではありません。いまは、ユーザーが「どう使うか」を考える段階にあるツールです。
中小企業こそ、生成AIを活かせる理由
生成AIの価値は、企業規模の大小では決まりません。むしろ、意思決定が早く、現場と経営の距離が近い中小企業こそ、活かしやすいと私は考えています。
例えば、自社の現状を把握する際、生成AIに「一般的な中小製造業に求められる標準的な在り方」を整理させ、それと自社を比較する。このプロセスを通じて、「自社の強み」「見て見ぬふりをしてきた課題」「本来、優先すべき打ち手」が、驚くほど素直に見えてくることがあります。重要なのは、生成AIの答えを鵜呑みにすることではありません。「比較することで、自社を客観視する姿勢」を経営者自身が持つことです。この姿勢こそが、次の一手を考える土台になります。
改善活動と人材育成を、同時に前へ進めるために
製造業では、改善活動において「PDCAを回せ」と言われ続けてきました。しかし実際には、
Planで止まり、
Doが属人化し、
Checkが形骸化し、
Actionにつながらない――
というケースも少なくありません。生成AIは、このPDCAの各場面で、経営者や現場の思考を補助する存在になり得ます。課題整理、原因分析の視点出し、対策案の言語化、振り返りの整理。これらを通じて、改善活動のスピードと質を高めると同時に、人材育成と結び付けて進めることが重要だと、この1年、強く感じてきました。
生成AIを含む新しい技術を、「分からないから距離を置く」のではなく、「分からないからこそ、使いながら考える」姿勢が大切です。その伴走者として、私は中小製造業の経営者の皆さまと共に、課題を認識し対策を実行する存在であり続けたい。その思いを胸に、来年も活動してまいります。
本年、本当にありがとうございました。 そして来年も、どうぞよろしくお願いいたします。
